紙から伝わる温度

過去に二度の引越しを経験した。

その間も何となく、手放さず抱えて住まいを変えてきたアルミの箱。

でも中身はよくわかっていない、くたびれた銀色の箱。

その箱を、今日、開けた。

ひっくり返すとたくさんの手紙が出てきて、
まるで玉手箱みたいに、懐かしい匂いがした。

10年以上止まっていた時間が、今と繋がった。


一番古いものは小学生時分のもの。


「今から入れ歯を心配しなくてもいいから、まずは一緒に歯医者に行ってみませんか?」
と言う母からの手紙。

多分、歯が痛いのを我慢して、
(歯医者に行ったら総入れ歯にさせられる)という妄想にとりつかれた私をあんじて、
母がそっと置いてくれた手紙だと思う。


一番衝撃を受けたのは、
大学に合格した時に親戚からのたくさんの手紙をもらっていたということ。

恥ずかしながら、もらったことも忘れていた。

 



毎日一日10時間勉強し続けた受験時代。

どんな時もずっと机に向かっていた私を、家族が、親戚が、ずっと、ずっと、そっと応援してくれていた。

 

 

そして合格した時、
みんな、私の合格を泣くほど喜んでくれて、喜びを文字にして、手紙にしてくれた。

 

親戚同士で示し合わせたわけでもないのに、

 

 

まるでオリンピック選手みたい。

 

 

スポーツに限らず、

誰かが一生懸命頑張る姿は、
それだけで、周囲の人を励まし、周囲の人の心を満たすんだと実感した。

 

一生懸命、頑張ること。

好きなことを、一生懸命頑張り続けること。

 

 

その姿勢が、みんなの元気になる。

互いの支えになる。

 

 

頑張る理由はなんでもいい。

自分のために頑張ればいい。

 

 

自分の好きなことのために、一生懸命頑張ればいい。

 

休むのが苦手な人は、頑張って休めばいい。

 

 

きっとどんな一生懸命も、ただそれだけで、誰かへのエールになる。

 

 

 

 

私はあんなに頑張って美術の大学に入ったけど、今は歌を歌ってる。

 

 

 

 

一生懸命歌おう。

 

 

 

 

懐かしい匂い、

10年以上前の紙から、伝わる温度。

 

 

なんとなくそっと側にあり続けた手紙から、
今も
じんわりとひとのやさしさが伝わってきた。 

 

 

 

 

 

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